
旬の季節から名産地、栄養まで徹底解説!
気になる食中毒対策もお教えします
冬の味覚・牡蠣
「海のミルク」と呼ばれるほど、栄養価の高い牡蠣。とれたてを生で味わうのはもちろん、寒い季節は牡蠣フライや鍋、酒蒸しなどにしても美味しいですよね。代表的な産地や体にうれしい成分、養殖の歴史など、知って得する情報をご紹介します。また、牡蠣を食べる時に気をつけたいのが食中毒。「あたる」原因や注意すべきポイントについても詳しく解説していきます。

もくじ
1.牡蠣の種類と旬の時期
世界には約200種類もの牡蠣が生息すると言われています。このうち、日本近海にいる牡蠣は約30種類ほど。普段、私たちが主に食べているのは、真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)の2種類です。一般的に、牡蠣の旬といえば冬のイメージがありますが、産地や種類によって旬の時期はそれぞれ異なります。
【真牡蠣】
日本で最もポピュラーな牡蠣で、ほとんどが養殖物。スーパーなどの店頭によく出回っているむき身も、大半はこの真牡蠣です。薄く細長い殻を持ち、サイズは大きくありませんが、その分旨みがギュッと凝縮されており、まろやかでクリーミーな味わいが楽しめます。代表的な産地は広島県、宮城県、岡山県など。冬場に旬を迎えます。
産卵期の夏は身がやせて水っぽくなるため、味が落ちると言われていますが、最近は冷凍技術の発達により、季節を問わず美味しい牡蠣が食べられるようになっています。
【岩牡蠣】
分厚い殻に覆われ、大ぶりでジューシーな味わい。プリッとした弾力のある食感も特徴です。代表的な産地は日本海側に多く、山形県、秋田県、石川県などが挙げられます。別名「夏牡蠣」とも呼ばれる通り、旬の時期は夏。養殖物と天然物があります。
2.牡蠣養殖の歴史
牡蠣の養殖に関する歴史は古く、ヨーロッパではローマを中心に紀元前から養殖が行われていたようです。生牡蠣はフランス料理のオードブルにもなっていて、皇帝ナポレオン1世の好物だったとか。現在ではアメリカやスペイン、中国、韓国など、世界各国でさかんに養殖されています。
日本では、縄文時代の貝塚から多くの牡蠣の殻が見つかっており、昔から食用とされてきたことがわかります。室町時代の終わりごろには、広島県で牡蠣の養殖が始まったとされますが、生食が普及したのは意外と遅め。欧米の食文化が入ってきた明治時代以降に生で食べる習慣が一般化したそうです。
3.日本を代表する牡蠣の名産地
世界で一、二を争う牡蠣消費国の日本。北は北海道から南は九州まで、多くの名産地に恵まれています。ここでは全国の代表的な産地と、そこで獲れる牡蠣の特徴をご紹介します。
【広島県】
牡蠣の年間生産量日本一を誇る広島県。瀬戸内海の穏やかな海はプランクトンが豊富で、牡蠣の生育に最適な環境が揃っています。「広島かき」「かき小町」などのご当地ブランドも人気で、コクのある濃厚な味わいは絶品。広島産の牡蠣は県が独自に条例を定め、食品衛生上の安全対策に力を入れている点も評価されています。

【宮城県】
広島県に次いで年間水揚げ量が多い宮城県は、松島や気仙沼、石巻などの産地が有名。1970年代にフランスで在来種の牡蠣が激減した時、宮城県の種牡蠣を輸入してピンチを乗り越えた逸話でも知られています。三陸沖の栄養豊かな海に育まれた牡蠣は、クリーミーながらもあっさりとしていて食べやすいのが魅力です。
【岡山県】
ふっくらとした弾力があり、加熱しても身が縮みにくい岡山の牡蠣。瀬戸内の海と川、島々の恵みを受けて、通常なら種つけ後2〜3年かかるところ、1年で出荷できる大きさに成長します。名産地の日生(ひなせ)では、山盛りの牡蠣を使ったお好み焼き「カキオコ」がご当地グルメとして親しまれています。とれたての牡蠣を自分で焼いて楽しめる牡蠣小屋も人気を博しています。
【北海道】
厚岸(あっけし)の「カキえもん」や寿都(すっつ)の「寿かき」など、味に定評のあるブランド牡蠣を数多く生み出している北海道。なかでも厚岸は、アイヌ語の「アッケケシ(牡蠣が獲れる場所)」を語源とする説があるほど、全国でも指折りの名産地です。海水温の低い北の海でじっくり育った牡蠣は、栄養豊富で旨みもたっぷり。夏でも美味しい牡蠣として1年中出荷されています。
4.低カロリー・低脂肪で栄養豊富な牡蠣
生牡蠣は1個あたりのエネルギーが約10〜12kcal(平均重量を約20gとした場合)と低カロリー。脂質も2.2gと低脂肪で、ダイエット中の方にもうれしいヘルシー食材です。タンパク質やビタミンB群のほか、カルシウムやマグネシウムなどの栄養素もバランスよく含んでいます。ここでは、特に注目の成分について解説していきます。
【ビタミンB12】
血液中の赤血球を作る栄養素。アミノ酸の代謝やタンパク質の合成もサポートします。ビタミンB12が不足すると、貧血やめまいなどを引き起こすおそれがあります。
【亜鉛】
新陳代謝やタンパク質の合成に欠かせない成分。必須ミネラルのひとつですが、人間の体内では生成できないため、食品から摂取する必要があります。推奨される1日の平均摂取量は成人男性で11mg、女性で8mgとされています。生牡蠣に含まれる亜鉛の量は14mg(可食部100gあたり)。数ある食材の中でもトップクラスを誇ります。
【鉄分】
全身に酸素を運び、エネルギーを作り出すミネラルの一種。鉄分が足りないと、貧血や頭痛、だるさなどの原因につながります。牡蠣に含まれる鉄分を効率的に吸収するなら、ビタミンCたっぷりのレモン果汁と一緒に摂るのがおすすめです。
【グリコーゲン】
牡蠣の身から出る白い汁はグリコーゲンという旨み成分で、肝臓の働きを助けると言われています。季節によって含有量は変わりますが、冬場にとりわけ多くなる傾向。グリコーゲンが豊富な牡蠣は、身の表面がつややかでジューシーな旨みが凝縮されています。
【タウリン】
牡蠣やイカ、タコなどに含まれるアミノ酸に似た成分。高血圧予防や肝機能アップ、コレステロール減少などの効果が期待できると言われています。人間の体内で生成する量だけでは足りないため、食品などから取り入れる必要があります。
〈生牡蠣の栄養成分表〉
エネルギー | 58Kcal |
タンパク質 | 6.9g |
脂質 | 2.2g |
カルシウム | 84mg |
マグネシウム | 65mg |
鉄 | 2.1mg |
亜鉛 | 14mg |
ビタミンB12 | 23.0μg |
葉酸 | 39μg |
(可食部100gあたり)
※文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」より
5.食中毒予防に!牡蠣を食べる時の注意点
牡蠣を食べる時に注意しなければならないのが食中毒。特にノロウイルスは、乾燥や低温に強く長期間生存しやすいため、冬場に流行することが多い感染症です。ノロウイルスに汚染された牡蠣を充分に加熱しないで食べると、食中毒を引き起こすおそれがあります。一見、新鮮そうな牡蠣でも、生のまま食べようとするのは危険です。牡蠣は食品衛生法にもとづき、次の条件を満たした場合のみ、生で食べられます。
- ●海水中の大腸菌数が定められた基準を満たした海域で採取されたもの、あるいは同等の基準を満たした海水または人工塩水で浄化したもの
- ●洗浄殺菌した器具を用いて、衛生的な場所で加工したものなどの基準を満たしたもの
これは、簡単に言うと「大腸菌が少ない、きれいな海でとれたもの」「収穫後に浄化処理を施し、大腸菌を少なくしたもの」「衛生的に加工されたもの」だけが生食できるという意味です。衛生基準を満たした生食用牡蠣は「生食用」、それ以外の牡蠣は「加熱調理用」「加熱用」という風に明記されています。たとえ新鮮でも 「生食用」の表示がない牡蠣は、必ず加熱して食べるようにしましょう!
加熱の際は、中心部までしっかり火を通すことが大切。中心温度85〜90℃で、90秒以上かけて加熱してください。約20gの牡蠣をフライにする場合は、170℃の油で3分半ほど揚げるのが目安です。また、調理前の牡蠣にふれた包丁やまな板などのキッチン用品もきちんと消毒して、手を洗いましょう。

6.牡蠣にあたる人、あたらない人の違いって?
牡蠣にまつわる食中毒といえば、同じ皿に盛られた生牡蠣を食べても、「あたる人」と「あたらない人」がいるのは不思議ですよね。実は、牡蠣に「あたりやすい人」には特徴があるんです。
不規則な生活や栄養バランスのかたよった食事をしている人は、免疫力が低下して食あたりしやすくなります。体調が良くない時は食中毒にかかりやすくなっているので、牡蠣のように「あたる」リスクがあるものを食べるのは控えた方がベターです。子供や高齢者、妊娠中の方なども免疫力が低いので、生食ではなく加熱調理した牡蠣を食べるようにしましょう。
《出典元・参考文献》
農林水産省「特集2 カキ(1)」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1709/spe2_01.html
農林水産省「生食用牡蠣と加熱用牡蠣の違いについて教えてください」
https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/2110/01.html
農林水産省「カキの世界の総生産量(100万トン)の推移
www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/attach/pdf/kaigai_license-12.pdf
公益社団法人 日本水産資源保護協会「我が国の水産業 かき【牡蠣】」
https://www.fish-jfrca.jp/02/pdf/pamphlet/089.pdf
乾 政秀(一般社団法人 東京水産振興会)「日本のカキ養殖・百科」
https://www.suisan-shinkou.or.jp/promotion/pdf/SuisanShinkou_544.pdf
広島漁業協同組合連合会「広島牡蠣とは?」
https://www.hs-gyoren.jp/h-kaki.html
広島市水産振興センター「広島かきの歴史」
http://www.haff.city.hiroshima.jp/suisansc/kaki_rekisi.html
宮城県「宮城のカキ情報」
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/suikisei/kakitop.html
岡山県漁業組合連合会「岡山とかき」
https://www.oygyoren.or.jp/okayama-kaki/about/
岡山観光WEB「おかやまの牡蠣」
https://www.okayama-kanko.jp/feature/okayama-gourmet/04
全国漁業組合連合会「全国のプライドフィッシュ 北海道 厚岸のかき」
https://www.pride-fish.jp/JPF/pref/detail.php?pk=1407908778
きむら内科・内視鏡クリニック「牡蠣による食中毒について(主にノロウイルスについて)」
https://kimura-naishikyo.com/blog/archives/387
オトナンサー『「カキ」にあたる人・あたらない人、何がどう違う?→実は「あたりやすい人」には特徴があった【医師解説】』
https://otonanswer.jp/post/243925/
Kufura「牡蠣はミネラル豊富で健康にうれしい栄養がたっぷり!気になる食中毒についても解説」
https://kufura.jp/life/food/266319#google_vignette
デリッシュキッチン「牡蠣(カキ)の栄養とは? それぞれの働きやカロリーも解説」
https://delishkitchen.tv/articles/1342
マカロニ「牡蠣の旬はいつ?種類や産地の違いもあわせて解説」
https://macaro-ni.jp/60358?page=2
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