2023.08.13

黒糖でおいしくヘルシー習慣

ほろほろと淡い口どけで、すっきりと優しい甘みが際立つ黒糖。
何となく体に良さそうなイメージがあるけれど、実際にはどんな栄養素を含んでいるのでしょうか。また、一般的に流通している白糖とは何が違うのでしょうか。
知っているようで意外と知らない、黒糖の奥深い世界をのぞいてみましょう!

黒糖イメージ

1.黒糖の歴史

黒糖の原料となるサトウキビは、一年を通して温暖な気候に恵まれた南国の離島で栽培されています。日本国内では、沖縄や鹿児島の島々が主要産地として有名です。

日本における黒糖の歴史は、江戸時代初期までさかのぼります。
発祥の地については諸説ありますが、1610年に奄美大島の直川智(すなおかわち)が中国から持ち帰った技術で黒糖作りに成功したのが始まりと言われています。
続いて1623年に琉球(沖縄)の儀間真常(ぎましんじょう)が中国に特使を派遣し、本格的な製糖法を習得させました。これがきっかけとなり、西日本各地に黒糖作りが広まっていったそうです。

2023年は日本に黒糖作りが伝わって400年という記念の年でもあります。先人たちの足跡に思いをはせながら、黒糖のさらなる魅力に迫りましょう。

2.島によって異なる黒糖の味

サトウキビは育った土地の気候や環境、さらには品種や栽培方法などにより、それぞれに異なる個性を持っています。同じ品種のサトウキビでも畑によって味が違ってくるほど、風土の特性が如実に反映されやすい作物なのです。

日本の名産地として名高いのは鹿児島と沖縄の2県ですが、一般的に鹿児島産はすっきりまろやかな後味で黒糖特有の苦みや渋みも少なく、色もやや薄めと言われます。いっぽう沖縄産黒糖は後味、香りともに濃厚なものが多めです。
軽やかで上品な甘さがお好みの方には鹿児島産、黒糖らしいインパクトのある味がお好みの方には沖縄産がおすすめです。

味、色、形、食感。さまざまな島の黒糖を食べ比べながら、お気に入りを探すのも楽しいですね。2県の代表的な名産地を以下にまとめてみましたので、黒糖選びの際にぜひご活用ください。

【鹿児島の黒糖】

鹿児島県地図

種子島

  • 特長:鉄砲伝来やロケット打ち上げで知られる種子島は、日本のサトウキビ栽培北限の地。農業に適したなだらかな平地が比較的多く、一年中爽やかな風が吹いています。この島で作られる黒糖は、しっかりと香ばしいコクがありながらも甘さは控えめ。独特の苦みや渋みも少なく、すっきりとまろやかでバランスの良い味わいが際立ちます。外見は若干黄みがかった茶色をしています。
  • おすすめ料理:スーッと素早く溶けるので、そのまま食べるのはもちろん、蒸しパンやマフィン、スイートポテトなどのお菓子作りから、豚角煮や酢豚、大学いも、焼きなす、黒豆煮といった和食まで、幅広い料理に活躍します。

(色味)黒糖色イメージ_種子島

種子島からの眺望
種子島からの眺望

奄美大島

  • 特長:大島紬の伝統的な染色法“泥染め”でも知られるように、奄美大島の土は鉄分を多く含んでいます。この地で作られる黒糖はエグみが少なく、甘さすっきり。見た目は薄いベージュ色で、キャラメルのような形をしています。
  • おすすめ料理: 豚肉や野菜の煮物、豚角煮、とんこつなど、料理に深みを出したい時におすすめです。コーヒーや紅茶に入れても。

(色味)黒糖色イメージ_奄美大島

喜界島

  • 特長:隆起珊瑚礁の土壌に育まれた喜界島の黒糖は、雑味のないピュアな甘みと旨み、ほんのり果実のような酸味があります。一粒一粒がゴロッと大ぶりで、薄いベージュ色をしています。そのまま食べるとシャリシャリとした食感の後、なめらかな口どけに変化します。
  • おすすめ料理:きんぴらごぼうや佃煮、梅酒、梅シロップなどにどうぞ。

(色味)黒糖色イメージ_喜界島

徳之島

  • 特長:中部〜北部に山地、南部〜西部になだらかな平地が広がる徳之島の黒糖は、香り高く濃厚な甘みが顕著。もっちり柔らかな口あたりで、香ばしい後味がほのかに漂います。外見は赤みの強い茶褐色をしています。
  • おすすめ料理:おしるこやジンジャークッキー、ホットミルクなど、和洋のスイーツにぴったりです。

(色味)黒糖色イメージ_徳之島

加計呂麻島

  • 特長:島の中心部に低い山が連なり、入り組んだ海岸線が複雑な輪郭を描く加計呂麻島。この島で作られる黒糖は、小ぶりでやや黄みがかった薄い色をしています。自然な甘みが強く、滋味豊かでポリフェノールもたっぷり。
  • おすすめ料理:さらりとした食感と爽やかな香りで、アイスコーヒーやカフェラテ、ミントティーなどによく合います。

(色味)黒糖色イメージ_加計呂麻島

【沖縄の黒糖】

沖縄県地図

伊平屋島(いへやじま)

  • 特長:沖縄本島北西部に浮かぶ細長い形をした伊平屋島。この島では一年中、心地よい潮風に吹かれて育ったサトウキビを用いるため、ほんのり塩味の効いた黒糖に仕上がります。ほろ苦い甘さと奥深いコクはまさに大人の味わい。硬く大粒で、しっとりとした独特の食感もクセになります。
  • おすすめ料理:魚の煮つけやラフテーなど、おかず系メニューの味つけに最適です。

(色味)黒糖色イメージ_伊平屋島

伊江島

  • 特長:沖縄本島本部からフェリーで30分の近さにある島で、2011年(平成23年)から黒糖製造が始まったばかり。コロンとした小ぶりな形状が可愛らしい黒糖です。
    柔らかく繊細な口どけで、甘みと塩味のバランスが取れた味わいが引き立ちます。
  • おすすめ料理:紅茶やコーヒーに入れたり、ティラミスやビスキュイ、バニラアイスのアフォガードなどに。

(色味)黒糖色イメージ_伊江島

粟国島(あぐにじま)

  • 特長:沖縄本島から60kmほど離れた場所にある粟国島。自生するソテツが多いことから、別名「ソテツの島」とも呼ばれます。特産品の黒糖は甘み、塩味、食感ともに均整が取れ、白糖に近い淡い味わい。じんわり染み渡るような口どけも魅力です。
  • おすすめ料理:クセのない懐かしい風味をぜひそのまま味わってみてください。

(色味)黒糖色イメージ_粟国島

多良間島

  • 特長:宮古島と石垣島の中間にある純農村の小さな島。濃い茶褐色をした長方形の黒糖は、ひと目で多良間島産とわかるほど個性的です。潮風の影響を受けにくい環境で作られるため、ひときわ濃厚な甘みがあります。硬めのしっかりとした粒も存在感大。
  • おすすめ料理:力強い甘みを活かして、おはぎや羊羹、モンブラン、タピオカミルクティ―などにしてみてはいかがでしょうか。

(色味)黒糖色イメージ_多良間島

小浜島(こはまじま)

  • 特長:日本最大の珊瑚礁・石西礁湖(せきせいしょうこ)内にある小浜島の黒糖は、薄く平らな見た目がどことなくチョコレートを連想させます。シャリシャリの食感と、甘すぎず苦すぎない風味で後味も爽やか。甘い物が苦手な方にもおすすめです。
  • おすすめ料理:肉じゃが、くるみ小女子、もずく酢、サーモンマリネなど、おかず系メニューの味つけに適しています。

(色味)黒糖色イメージ_小浜島

西表島

  • 特長:沖縄本島の次に大きな島で、天然記念物のイリオモテヤマネコやセマルハコガメなど、独自の生態系を持つ“東洋のガラパゴス”。豊かな大自然に育まれた西表島の黒糖は、しっとりとした甘みと奥深いコクがポイント。塩気や苦みがほとんどなく、幅広い料理に使えます。白っぽい色合いで粒が大きく、ガツンと硬い食感です。
  • おすすめ料理:サッと煮ただけで味がよく染みるので、玉ねぎを使った煮込み料理に最適。おはぎや羊羹のような和菓子はもちろん、シロップにしてヨーグルトなどにかけてもおいしいですよ。

(色味)黒糖色イメージ_西表島

西表島のマングローブ群落
西表島のマングローブ群落

与那国島

  • 特長:石垣島から飛行機で約30分。台湾が見える日本最西端の島です。台地で栽培される原料のサトウキビは、数十年ほど前まで与那国馬と呼ばれる在来馬が運搬役を担っていました。与那国島の黒糖は、黄みがかった明るい茶色とキャラメルのような四角いフォルムが印象的。ほのかに塩気を感じさせる甘さ控えめの味わい、しっとり柔らかな口あたりで、世代を問わず食べやすいのも魅力です。
  • おすすめ料理:淡白でしつこさがないので、タコライスや肉じゃが、かぼちゃ煮、ラフテー、白身魚のお造りなど、さまざまな調理に使えます。

(色味)黒糖色イメージ_与那国島

波照間島

  • 特長:南十字星が一番はっきり見える日本最南端の島で、白砂とエメラルドグリーンの海が美しい北浜や珊瑚礁の群れなど、風光明媚な自然に囲まれています。豊かな土壌に育まれた黒糖は、ギュギュッと凝縮された甘みと旨み、深いコクが特長。ゴロッと大粒でシャリシャリの食感も際立っています。
  • おすすめ料理:濃厚な風味を活かして、葛切りやゼリーのようなスイーツにどうぞ。チャイやミルクに入れても香ばしい甘さが楽しめます。

(色味)黒糖色イメージ_波照間島

波照間島の海
波照間島の海

3.黒糖と白糖の違いって?

製法の違い

日本の砂糖は、主にサトウキビとてんさい(さとう大根)から作られます。

砂糖の種類は大きく分けて2つ。製法の違いによって「分みつ糖(精製糖)」と「含みつ糖」に分類されます。 では、私たちが普段スーパーなどで見かける黒糖と白糖はどちらに区分されるのでしょうか?それぞれの特性を理解して、日々の暮らしに上手に取り入れましょう。

含みつ糖

原料から抽出した汁を煮詰めて作られたもの。ミネラルなどの栄養素が除去されず、豊富に含まれています。黒糖や和三盆糖は含みつ糖に分類されます。

【黒糖(黒砂糖)】

細かく刻んだサトウキビを圧搾機にかけ、絞り出した汁を煮詰めて固めることで作られます。製造工程で糖蜜を取り除かずにそのまま煮詰めるので、独特の茶褐色をした結晶ができあがります。

【てんさい糖】

てんさい(さとう大根)から作られる砂糖。クセの少ないまろやかな甘さで、精製糖の代わりに使われることも。ミネラルのほか、腸内善玉菌のオリゴ糖を含有しています。

【和三盆糖】

竹糖と呼ばれるサトウキビの糖液から粗糖のかたまりを分離させ、少量の水を加えて練り上げた後、布袋に入れて圧搾。この工程を繰り返して作る、伝統的な手作り砂糖です。

分みつ糖(精製糖)

精製過程でできた糖蜜を遠心分離機にかけ、不純物やミネラルを除去。甘み成分のショ糖だけを結晶化させたもの。白色でクセがなく、糖分以外の栄養素はほとんどありません。白糖やグラニュー糖は分みつ糖に分類されます。

【白糖(上白糖)】

日本特有の砂糖で、原料糖を精製して結晶化した後、転化糖を加えて作られます。しっとりとした口あたりでクセがなく、甘みも強め。料理からお菓子作りまで幅広く使えるため、国内で最も多く使われています。白糖のきれいな白色は特に漂白しているわけではなく、無色透明の結晶が光を反射して白く見えているのだそうです。

【三温糖】

上白糖と同じく日本特有の砂糖で、ほんのり薄い茶色をしています。上白糖を作った残りの液を三度煮詰めて作ることからこの名前に。しっとりなめらかな甘みがあり、味噌を使った料理に最適。煮物や漬物、酢の物、佃煮などに入れると、強い甘さとコクが出ます。

【グラニュー糖】

世界で最も多く使われている砂糖。純度が高く、サラサラの質感で溶けやすいのが特長です。お菓子作りやコーヒー、紅茶などに適しています。

【白ざら糖】

グラニュー糖より結晶が大粒で、無色透明の砂糖。高純度で光沢があり、高級菓子やわた菓子、ゼリー、果実酒などに使用されます。

【中ざら糖】

純度が高く、結晶の大きな砂糖。カラメルにより黄褐色をしています。料理にコクと照りを出すので、煮物やすき焼き、照り焼き、漬物などに使われます。

砂糖イメージ

栄養素の違い

おいしさとヘルシーさを兼ね備えた黒糖は、罪悪感なく楽しめる“ギルトフリー食材”として近年注目を集めています。

前述した通り、黒糖は製造過程で糖蜜を残したまま加工するので、栄養素が壊れることなく凝縮されています。このため、白糖(上白糖)に比べてビタミンB群やカリウム、カルシウム、マグネシウムといった天然のミネラル(無機質)が豊富に詰まっています。

なかでもカルシウムの含有量は白糖の240倍。比較的カロリーが控えめな点もうれしいですね。

毎日の食生活に取り入れれば、不足しがちな栄養素のサポートにも役立ちます。牛乳に黒糖を加えると、カルシウムの吸収率がさらにアップしておすすめです。

〈黒糖・白糖の栄養成分比較表〉 ※日本食品標準成分表2020(八訂)を基準として再計算

成分黒糖てんさい糖和三盆等上白糖三温糖グラニュー糖白ざら糖中ざら糖
エネルギー (Kcal)352357393391390394393393
水分 (g)4.420.30.70.9000
たんぱく質 (g)1.70.90.200000
炭水化物 (g)90.396.999 99.399100100100
ナトリウム (mg)2748117002
カリウム (mg)110027140213001
カルシウム (mg)24002716000
マグネシウム (mg)3101702000
リン (mg)3111300000
鉄 (mg)4.70.10.700.1000.1
亜鉛 (mg)0.500.200000
銅 (mg)0.2400.070.010.07000.02
ビタミンB1 (mg)0.0500.0100000
ビタミンB2 (mg)0.0700.0300.01000
ビタミンB6 (mg)0.720.010.0800000
ナイアシン (mg)0.90.3000000

4.黒糖の作り方

産地や工場によって多少の違いはありますが、黒糖はおおよそ次のような手順で作られます。それぞれの工程には、サトウキビ本来の甘みを最大限に引き出す職人技が随所に光っています。

【圧搾】

刈り取ったサトウキビは、鮮度が落ちないうちに圧搾機にかけられます。ローラーに茎を差し込んでいくと、搾ったサトウキビの汁がジュワッと流れ出します。

搾りたての原液は、清々しい香りに満ちてフルーティー。梨のようなみずみずしさとすっきり爽やかな甘さで、そのままでもフレッシュジュースとしておいしく飲めます。

サトウキビジュース

【濃縮】

搾りたての原液は沈殿・ろ過して不純物を取り除いた後、じっくり煮詰めて濃縮していきます。黒糖作りで最も難しいのは、この濃縮作業なのだそう。アク取りに使う食品用石灰の量から火加減の調整、釜を火から上げるタイミングまで、細心の注意を払わなければなりません。アクをしっかり丁寧に取り除くことで、クセのない甘さとなめらかな口あたりが引き出されるのです。
何度か濃縮を繰り返すうちに、サラサラだった液体が徐々に粘り気を帯び始め、トロッとした水あめのような状態に変化します。煮汁が半分ほどの量になったら、一気に撹拌作業へ。液体状の黒糖は温度が低下するとどんどん固まってしまうので、素早く移し替えるのがポイントです。

【撹拌・冷却】

濃縮した汁はたっぷり空気を含ませながら、手早く攪拌します。こうすることで黒糖が冷えて結晶化し、きれいに固まるのです。

丁寧に練り上げてなめらかになったら、生地を薄く広げて冷やし固めます。冷却後、しっとりと柔らかく仕上がった黒糖をひと口大にカットしたら、ようやく完成です。

〈サトウキビから黒糖ができるまで〉

サトウキビから黒糖ができるまで

※手作業と機械では工程が多少異なります。

5.黒糖には旬がある?

サトウキビと言うと、南国で育つイメージから「夏に収穫されるもの」と考える方が多いかもしれません。
実は、サトウキビは暑いと糖度が落ちてしまうので、冬から春にかけて加工を行います。寒い時期に気温が下がると、サトウキビは成長がゆるやかになり、茎内部の繊維質に詰まった糖分がぐんと増えるのです。
地域や製糖所によって差はありますが、大体12月〜4月ごろに収穫期を迎えるところが多いようです。
季節を問わず店頭で見かける黒糖ですが、意外にも旬のシーズンは限られているのですね。

サトウキビ畑と収穫されたサトウキビ

ひとくちメモ

〈黒糖の保存方法と注意点〉

黒糖は湿気や強い日差しにとても弱く、高温の場所に置いておくとカビが発生するおそれがあるのでご注意を。
劣化が進むと、黒糖はだんだん色が濃くなり、黒ずんでいきます。さらにむせ返るような強い臭いを発するようになったら、かなり傷んでいる証拠。食べるのは止めた方が良いでしょう。
長期保存したい場合は冷蔵庫に入れても良いですが、粉末タイプは水分が飛んで硬くなってしまうので、密閉容器に入れて常温で保存するのがベストです。

6.大量生産できない希少な黒糖

1kgのサトウキビから取れる搾り汁の量は約500g。さらにその汁を濃縮した結果、出来上がる黒糖はわずか100gほどになります。
じっくり手間ひまをかけて純度と密度を高めた一粒一粒には、濃厚な旨みがギュッと凝縮されています。
毎日の料理に、お菓子に、ドリンクに。そのまま食べても、もちろんおいしい。
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