2023.11.11

次に来るかも!? 実は隠れた名店揃い 大注目の鹿児島ラーメン

日に日に肌寒くなるこの季節は、熱々のラーメンが無性に食べたくなりますよね。
日本を代表する国民食として、海外からも注目されているラーメン。全国にはさまざまなご当地ラーメンがありますが、みなさんは「鹿児島ラーメン」を知っていますか?
県下の名店がこぞって腕を競い合う「鹿児島ラーメン王決定戦」が開催されるほど、隠れラーメン激戦区の鹿児島。博多ラーメンとも熊本ラーメンとも異なる、独自の進化を遂げた鹿児島ラーメンは、九州ラーメンの中でも唯一無二の存在です。
個性豊かな味とスタイルで熱狂的なラーメンファンをも魅了する、鹿児島ラーメンの世界に迫ります。

鹿児島ラーメン

1. 種類豊富な九州ラーメン

九州のご当地ラーメンといえば、白濁した濃厚スープの豚骨ラーメンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、ひとくちに豚骨ラーメンと言っても、地域によってさまざまな種類があります。まずは九州各地のラーメンにどのような違いがあるのか紐解いてみましょう。

久留米ラーメン

福岡=博多ラーメンの印象が強いですが、実は九州ラーメンの元祖は久留米ラーメンです。
九州最初のラーメンは、「南京千両」が1937年(昭和12年)に屋台で出した豚骨ラーメンと言われています。この頃の豚骨スープはまだ白濁していませんでした。
豚骨の代名詞である白濁したスープは、偶然のミスから生まれた産物です。
それまでのスープは炊き上がったらすぐ弱火に切り替え、澄んだ状態で提供するのが定番でしたが、「三九」の店主はうっかり火加減を間違えて外出してしまったそう。用を済ませて帰ると、強火で煮込んだスープは真っ白に濁っていました。
試しにこれを飲んだところ美味しかったため、それ以来スープとして使われるように。「三九」が作り出した豚骨ラーメンの味は、同じ県内の博多をはじめ、熊本や宮崎、佐賀、大分にも影響を与え、鹿児島を除く九州全域で主流となっていきました。麺はやや硬めのストレートな細麺、スープはあっさり系から濃厚系まで、店によって幅広いのが特徴です。熟成したスープに新しいスープを継ぎ足して旨みを出す「呼び戻し」も、久留米ラーメンならではの伝統製法です。

博多ラーメン

色とりどりの具材が楽しい博多ラーメン

久留米ラーメンの系譜に連なる博多ラーメンは、豚骨ラーメンの代表格。強火で長時間炊き上げた濃厚な白濁豚骨スープとコシのある極細のストレート麺は、言わずと知れたトレードマークです。当初は澄んだスープと白濁スープの2系統があったのですが、次第に白濁スープの方がスタンダードになっていったのだとか。
極細麺はスープを吸収しやすくのびやすいため、一杯の量を少なめに提供する店が多いそうです。この量で物足りない人は、替え玉でおかわりを頼みます。
「やわ」「かた」「バリカタ」「はりがね」という具合に、麺の硬さが選べる点も大きなポイントです。博多っ子には麺の茹で時間が短く、硬めの「バリカタ」が人気。お好みで紅生姜や辛子高菜、万能ネギ、きくらげなどをトッピングするのも定番スタイルです。

長浜ラーメン

福岡市の長浜ラーメンは、極細麺の替え玉システムを博多に先駆けて採り入れた“替え玉のパイオニア”。長浜の替え玉システムは、地元の魚河岸関係者が忙しい競りの合間にも手早く食べられるよう考案されたもので、博多ラーメンとは別物です。
博多ラーメン以上に麺が細く、スープもより濃厚と評される長浜ラーメンですが、近年は博多との違いがあまりなくなってきているようです。

熊本ラーメン

焦がしニンニクが香ばしい熊本ラーメン

久留米ラーメンの「三九」が熊本県玉名市に出店した際、その美味しさに感銘を受けた人々が熊本市内にそれぞれの店を開業しました。これが熊本ラーメンの発祥とされています。なかでも、いち早く東京に進出した「桂花」が店の看板に“熊本ラーメン”と掲げたことで、その知名度は全国区となりました。
熊本ラーメンは白濁した豚骨スープを使うので、見た目は博多ラーメンとあまり変わりません。大きく異なるのは、博多が豚骨100%なのに対し、熊本は豚骨に鶏ガラを加える店が多いこと。博多のようにスープを継ぎ足す習慣がなく、その日のうちに使い切るため、豚骨特有の臭いも少なめです。このため熊本ラーメンのスープは、濃厚ながらもまろやかな甘みがあると言われています。
にんにくチップやマー油(にんにくを揚げた油)などを入れて、香ばしく風味づけするのも熊本の特色です。麺は博多に比べて太めで、しっかりとした歯ごたえがあります。
博多や長浜のような替え玉システムがないので、熊本ラーメンは一杯のボリュームがやや多め。さらにたくさん食べたい場合は大盛りを注文しましょう。

ひとくちメモ

豚骨ラーメンは造語!?

「豚骨ラーメン」という名称ができたのは、意外と最近の話です。どこの誰が名づけたのかは不明ですが、1980年代(昭和50年代)中頃にはすでに「白濁したラーメン=豚骨ラーメン」と呼ばれるようになっていました。
当時は「九州じゃんがらラーメン」「なんでんかんでん」といった有名店が東京に進出。首都圏では豚骨ラーメンのことを「九州ラーメン」や「博多ラーメン」と呼んでいました。その後も九州発のラーメンは快進撃を続け、いつしか「豚骨ラーメン」の呼び名は定着していきました。しかし、ここで新たな疑問が芽生えます。
それまで九州の人たちは「豚骨ラーメン」を何と呼んでいたのでしょうか?
答えはシンプルに「ラーメン」です。
今では九州の人も「豚骨ラーメン」という言葉を日常的に使いますが、昔の九州ではラーメンといえば白濁したスープが当たり前だったからです。

2.独自のラーメン文化が息づく鹿児島

九州で唯一、久留米発の豚骨ラーメンと異なるルーツを持つのが鹿児島ラーメンです。麺もスープも他県とは一線を画す、独自のラーメン文化を育んできました。
鹿児島ラーメンの発祥は1947年(昭和22年)。戦前に横浜で看護師をしていた「のぼる屋」創業者の道岡ツナさんが、患者だった中国の料理人から看病のお礼にスープの作り方を教わったのが始まりとされています。そのスープは、豚骨ベースに鶏ガラや魚介、野菜を加えてじっくり煮込んだ優しい味わいだったそう。麺はツナさんの好みで、かんすいの入っていない白っぽい中太麺が使われていました。
そしてもう一店、鹿児島ラーメンを語るうえで欠かせないのが、1950年(昭和25年)創業の「こむらさき」です。こちらのラーメンは、ビーフンを参考にした細麺に野菜たっぷりのマイルドな豚骨スープを合わせたもの。「こむらさき」の麺も「のぼる屋」同様、かんすいを使用していませんが、食感には大きな違いがあります。
「のぼる屋」はもっちり柔らかくコシのある麺、「こむらさき」はそうめんのような優しい喉ごしで、それぞれの個性が全面に出ています。
1946年(昭和21年)創業の「ざぼん」も、鹿児島県民なら誰もが知っている老舗のレジェンド。名物の「ざぼんラーメン」は地元のソウルフードとして現在も愛され続けています。どんぶりの底に箸を入れ、旨みたっぷりの特製ダレとあっさり味の豚骨スープ、シャキシャキのもやしとキャベツ、麺をよくかき混ぜて食べるのがざぼん流。ボリューム満点の個性あふれる一杯は、鹿児島ラーメンの懐の深さを体現しています。

鹿児島湾(錦江湾)に浮かぶ桜島の絶景とマイルドな豚骨ベースの鹿児島ラーメン
(左)鹿児島湾(錦江湾)に浮かぶ桜島の絶景 (右)マイルドな豚骨ベースの鹿児島ラーメン

3.唯一無二の自由なスタイル

一般的なご当地ラーメンは、その地域に大きな影響を与えた1〜2軒を元祖として一定のスタイルが広まっていきますが、鹿児島の場合は「のぼる屋」や「こむらさき」のラーメンがスタンダードとはなりませんでした。
その理由は定かではありませんが、一説には自主独立の気風が強く、他のマネを嫌がる鹿児島の県民性が関係しているのではないかという指摘もあります。
鹿児島ラーメンには、福岡や熊本のようにハッキリとした定義がありません。むしろ、それぞれの店がオリジナリティを追求した、自由なスタイルこそが最大の特色です。それでもあえて言うなら、次のような点が共通項として挙げられるかもしれません。

  • ●豚骨メインだが鶏や野菜、干し椎茸、煮干し、昆布なども使うマイルドなコクのあるスープ。比較的脂が少なく、あっさり味で食べやすい。
  • ●かんすいを使わない、白っぽく柔らかめのストレート麺が多い。
  • ●ネギ・もやし・キャベツなどの野菜がたっぷり入っている。食材のバリエーションが豊富で、具だくさんな店が多い。
  • ●突き出し・付け合わせとして大根などの漬け物が出る。
  • ●小さな急須に入ったお茶が出る。

とはいえ、麺やスープに厳密な決まりはないので、味噌ラーメンや醤油ラーメンを提供する店も数多くあります。なかには油そばやつけ麺、パスタ感覚のトマトラーメンが看板メニューという個性派も。
これほどバラエティに富んだ店が揃っているのも、鹿児島ならではの魅力です。さまざまなラーメンの中から、ぜひお気に入りの“推し麺”を見つけてください。

人気の個性派ラーメン店
九州ラーメン早わかり表

ひとくちメモ

地域の特産品を使った「新・ご当地ラーメン」も要チェック!

鹿児島県内の各エリアをさらに細かく見ていくと、新たなご当地ラーメンが続々と生まれていることがわかります。たとえば指宿の「勝武士ラーメン」は、生産量日本一の本枯れ節※1をふんだんに使用した、老若男女に人気のご当地名物。マグロの水揚げ港として知られる串木野エリアには、チャーシューではなく生のヅケマグロをトッピングした「串木野まぐろラーメン」があります。
少し離れた離島の屋久島では、特産品のサバ節・アゴ節・宗田節で出汁を取り、地元の食材から造った醤油を使用した「屋久島ラーメン」が提供されています。また奄美大島では、郷土料理である鶏飯の具材※2を使った「鶏飯ラーメン」が新感覚グルメとして注目されています。
鹿児島を観光に訪れたら、王道の豚骨やニュージェネレーション系はもちろん、地域の特性を活かした新ご当地ラーメンを食べ歩くのも楽しいですね。

※1 かつおぶしの最高級品
※2 ほぐした鶏肉・椎茸・錦糸卵・ネギ・海苔・パパイヤの漬物・ミカンの皮

指宿の勝武士ラーメンと奄美大島の鶏飯ラーメン
(左)指宿の勝武士ラーメン (右)奄美大島の鶏飯ラーメン

鹿児島ラーメンにはご当地キャラがいる

鹿児島には「麺 in カゴンマ」というご当地キャラクターがいます。鹿児島のローカル特撮ドラマ「薩摩剣士隼人」に登場するキャラクターの一人で、鹿児島ラーメンの全てを知り尽くしたラーメン通。自分自身の体も鹿児島ラーメンでできているそうです。鹿児島ラーメンの多様性を心の底から愛し、今日も鹿児島のラーメン文化発展のために全力で活動しています。

4.「推し麺」に一票を!鹿児島ラーメン王決定戦

バラエティ豊かなラーメン店がしのぎを削る鹿児島では、2015年から「鹿児島ラーメン王決定戦」が開催されています。その名の通り、鹿児島で最も美味しいラーメン店を決める一大イベントで、県民投票により予選を勝ち抜いた店は、決勝戦のイベントに出店することができます。
決勝戦の会場では、来場者に好きなラーメンを食べてもらい、本投票を実施。鹿児島No.1のラーメン店が決定します。名だたる人気店が一堂に会し、このイベントでしか味わえない特別なラーメンも提供されるため、会場は多くのラーメン好きで賑わいます。前回の第5回大会(2019年)では、県内外から約18万人が来場して大いに盛り上がりました。
4年ぶりの復活となる第6回大会は、2024年2月23日(金)〜25日(日)の3日間に渡って開催。県民投票で選ばれた強豪18店が王座を目指して腕を振います。
白熱の決勝戦は地元テレビ局でも放送されるので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください!

〈第6回鹿児島ラーメン王決定戦〉

2024年2月23日(金)〜25日(日)10:00〜21:00(最終日は17:00まで)
会場 ウォーターフロントパーク(ドルフィンポート跡地前)

https://www.kts-tv.co.jp/event/ramen2024/

「鹿児島ラーメン王決定戦」表彰店の味が自宅でも楽しめます!

「Mr.RAMEN」は、鹿児島ラーメン王決定戦の表彰店である4店舗のバラエティに富んだ美味しさを集結させました。人気・実力・美味しさの三拍子揃った、鹿児島を代表する4店舗の個性あふれるラーメンを食べ比べてみてください!

《出典元・参考文献》

新横浜ラーメン博物館

https://www.raumen.co.jp/rapedia/study_japan/

明星

https://www.myojousa.com/ja/blog/regional-ramen/

共同通信

https://agrilab.kyodo.co.jp/foodstory/2022/11/post-98.html

熊本ガイド

https://kumamoto-guide.jp/ramen_navi/4city/

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